2021.11.10

#02 電動工具を使いこなせるかどうかが鍵になる。

株式会社タクトホーム 備海秀典さま 松本清孝さま

プロフェッショナルを育てる使命。
電動工具を使いこなせるかどうかが鍵になる。

東京都西東京市にある株式会社タクトホームで、大工の育成に携わっているのが備海秀典さん、54歳だ。備海さんは27年もの職人経験を元に、同社の若手社員に道具の使い方から工事に至るまでを一貫して教える。言わば、若手職人にとっての先生、親方的存在だ。 備海さんと同じく、タクトホームで職人の育成を行なうのが松本清孝さん(41歳)。18歳から大工の道に進み、備海さん同様に自身の経験、スキルを、職人教育の現場で活かしている。

若手の大工は皆、同社の総合技能部に所属する。その数53名で、平均年齢は23歳。全員が備海さん、松本さんの教えを経て一人前の大工となり、その後も同社の職人として働き続けているという。

「4年で一人前になるという、育成カリキュラムで指導しています。その後も社員大工として働き続けてくれています」 職人を擁する会社にとって人は財産。そのための育成であり、一人前の職人に仕上げるのがふたりの使命だ。技術を得て会社から巣立つのではなく、「ここで働き続けたい」と思う会社の雰囲気作りは、温和な備海さん、松本さんの人柄からうまれるのだろう。53名もの若手職人を抱える会社の雰囲気はとても明るい。

「まず教えるのは、安全第一。それから現場内の整理整頓です。怪我がないようにということです。その大前提があって、次にスピード。大工は綺麗に仕上げて当たり前なので、そこにある程度のスピードがないと、ひとりの大工として仕事を請けていくのはなかなか厳しい」

その上で、道具が重要だと備海さんは語る。ふたりが大工として現場に立っていた頃は、まだコード付き電動工具が主流の時代だった。徐々にコードレスの電池式電工具が出てきても、当時の製品はパワーが非力で、充電も持たない。電動丸のこにしては、切りたい材料が切れないほどだったという。

「この十年で、大工の道具は一変しました。今はもう、若い職人は最初に使う道具がコードレスという時代です」。電池式電動工具の進化が、現場に求められるスピードも向上させた。

繊細なコントロールと確かなパワーがスピードに直結する。

「古くは、差金と墨壺が大工道具の基本でした。今は、インパクトドライバと電動丸のこ。このふたつは基本セットです」
そこに、エア式の高圧ねじ打機を加えて、現代大工の三種の神器だと、備海さんは語る。

インパクトドライバやねじ打ち機だけあっても、ビスは留められるけど材料は切れない。電動丸のこで材料を加工したものを留めて、はじめて家が組み立てられていく。電動工具は、細かな使い勝手においても進化した。
「インパクトドライバはビスを“回す”だけではなく“叩く”という側面もありますが、この叩き方が荒いとビスが跳ねてしまう。ビスが外れてしまうと、そのまま材料に落ちて刺さってしまう。表面に出る建材に穴が開いてしまっては取り替えなければいけない。

新しい製品の登場により、この叩きがだんだんと細かくなってきて、使っていても、本当に叩いているのかなと思うほど衝撃が少なくなってきています」
タクトホームでは、若手の職人全員にHiKOKIのコードレスインパクトドライバを支給する。備海さんが感じた道具に求める“繊細なコントロールが行なえること”が、同社の道具選びに直結しているのだ。

一方の松本さんは、「あるとき現場でHiKOKI製品はパワーがあると聞いて、使ってみたらすごくいい」と、パワーを求めてHiKOKI製品を使い続けている。

「この会社に入る前は、コード付き電動工具を使用していました。常に作業がしづらいと感じてはいたのですが、どうしてもコードレス電動工具に信頼がなかった。自分の中では、パワーが弱いと思っていたのですが、使ってみたら同じぐらいかそれ以上の感覚で仕事ができた。もうコードレスで仕事ができる」と、一気に替えたという。

仕事道具を一変させた転機には、マルチボルトの登場もあったと、備海さんも松本さんの言葉をつなぐ。

「実際に現場で大きく変わったのは、マルチボルトのバッテリーが出てからです。持続時間が断然違う。ひと昔前までは頻繁に交換して使わなくてはならなかったし、バッテリーが熱くなったら動かなくなってしまう。なので、当時はコード付きを使っていれば安心していたところもありました。コード付きが止まるときは壊れるときですから。バッテリーがないから、今している作業を止めなくてはならないというのは、大きなストレスでした」

HiKOKIの電動工具は、マルチボルト対応製品であれば、バッテリーひとつで18Vも36Vの電動工具製品も、取り回して使うことができる。そのため、現場には職人ひとりに対して2個ずつ持っていき、ひとつ使って、もうひとつは充電しておくという。

「HiKOKIの電動工具が進化したのを、肌で感じてきました」。備海さんも松本さんも、道具に対して全幅の信頼を置く。

道具を使いこなせるかどうかが
大工の技能。

新しい職人が入る度に、新しい電動工具を与えるのがタクトホームのスタイルだ。ふたりは「4年間使うものだから、大事に手入れすること」と、道具に対する心構えから教える。

その上で、「良い仕事をするという気持ちが大事。それを実現するための道具なのだから」と、職人の“仕事道具”だという認識をもたせるという。

備海さんと松本さんの教えで若手の技能が磨かれていく。道具をいかにコントロールできるかが、仕事の良し悪しに結びつく。
「道具を使いこなせるかどうかで、仕上がりが変わってきます。今の時代は電動工具をうまく使えことが大工の基本です」。

かつて、大工の道具といえばノコギリとノミと玄翁(げんのう)だった。時代が変わり、電動工具が現場の主流となってきても、人が使うものには変わりがない。道具を活かすのは人次第。それが職人の腕になるのだから、ふたりは道具の大切さを丁寧に教える。
※“かなづち”の一種で、主に打撃部分の片側が平らに、片側がわずかに凸状に膨らんでいるものになります。

あなたにとって職人の道具とは。

「今の現場は、本当にこれだけの電動工具が主流になっています。使い方次第だと思うのですが、大工は現場に体ひとつで行っても何もできない。道具があって初めて仕事ができるので、電動工具ひとつひとつが、私にとって欠かせない相棒です」

大工と電動工具は欠かせないパートナーだと備海さんが語れば、松本さんも「全く一緒。道具がないと、いくらやろうと思っても何もできない。僕にとっても相棒ですね、本当にそう思います」と、電動工具に対して感謝の想いを語った。

職人を育てる会社、タクトホーム。道具に対するふたりの意識は、会社内の棚に整然と並べられていたHiKOKIの製品にも表れていた。道具を大切にする、そのためには整理整頓を欠かさない。この教えは同社で働く若手職人たちにも引き継がれている。

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